一昔前に使われ始めてすっかり定着した「草食系男子」という言葉、皆さんも聞いたことがあるかと思われます。草食系男子という言葉は本来、恋愛にガツガツせず、温和で周りに気を使える男子という意味を持ちます。
しかし、近年では大人しい男子を揶揄するような意味で使われることが多々あります。年配の世代や女性からはよろしくない評価を受けることが多いようですね。
しかし、草食系男子へのバッシングは正当性のある物なのでしょうか。そんなことはないと私の中のジャーナリズムが騒いだ次第でございます。
というわけで、本記事では草食系男子へのバッシングの例と、それがいかに的外れかを解説していきたいと思います。
そもそも草食系男子はどのような経緯で生まれた言葉なのでしょうか。元を辿ると、コラムニストの深澤真紀さんが命名したようです。この時から既に、優しくまじめで女性にもガツガツしない、そんな存在として描かれていたようです。
深澤さんは決して大人しい男の子を批判しようだとか、そのようなことを考えていたのではありません。むしろ褒め言葉として草食系男子を扱っていたようで、彼女の著書の中でも肯定的に描かれていました。
しかし、ここから歯車が狂いだします。草食系男子という言葉だけが独り歩きを始め、意味が歪められ始めてしまったのです。原因は雑誌やテレビといったメディアでしょう。現代の若者を否定的に描くか、それとも肯定的に描くか、視聴者に受けるのは当然前者です。昔から年配者は若者をこき下ろし溜飲を下げる生き物です。余談ですが、「最近の子供はカブトムシに電池が入っていると思っている」などの荒唐無稽な噂が出回ったのもこれが原因でしょう。
メディアが作り上げた草食系男子像は、おどおどしていて消極的、恋愛に自信がない、弱弱しいなどと原点からかけ離れたものでした。つまりメディアは自分たちで作り上げた「草食系男子のような何か」
草食系男子は恋愛や性行為に興味が無い、と度々言われているようですが実は必ずしもそうとは言い切れません。確かに大学生の男性の性交経験率は2005年と比べると2011年の時点で10%下がり、50%となっています。しかし、経験率の低下は何も男性だけではありません。むしろ女性の方がより減少傾向が顕著に見られます。草食化しているのは実は女性の方なのです。
そして、草食化したと言われる現代の男子より、数十年前の世代の方がさらに性行経験率は低かったことを忘れてはなりません。現代っ子は昔の人間よりはるかに性に対して開放的です。データによると1980年代の男子大学生の経験率は僅か30%くらいでした。
ちなみに、肉食系男子が跋扈した時代には、メディアは「若者の風紀が乱れている!けしからん!」と若者をバッシングしていました。
メディアは若者をバッシングできれば材料は何でもいいようですね。
テレビを見ていると時々こんなことを言う中高年、もとい老人に出くわします。年老いたタレントが、最近の若者は云々と講釈を垂れる姿を見ると微笑ましく思えます。時代錯誤に気付かないまま昔の価値観を持ち出してしまう、うっかりさんなのかもしれません。
彼らが草食系男子をよく思わない理由は簡単です。シンプルに自分が若いころに良しとされてきた男性像と噛み合わないからです。年を取り、同年台同士のコミュニティに浸かっていると、どうしても情報のアップデートが止まってしまうのです。
すぐに仕事を辞めてしまう若者や、仕事に興味を持たない若者、恋愛に興味が無い若者も確かに増えてきています。しかし、多様な生き方が認めらる社会というのはこのような人々も普通に生きていける社会のはずです。
昔の価値観を振りかざした批判は涼しい顔で流してあげましょう。
「最近の男は弱い」よく耳にする言葉です。恐らく中高年と呼ばれる人々から見れば、最近の男性はとてもひ弱な存在に見えているのでしょう。
しかし、強い、弱いという言葉の意味は非常に曖昧です。昔の男性と現代の男性にはそれぞれ違った強さがあるのではないでしょうか。
かつて、男性は仕事中心の生活を送り、妻子を養う大黒柱としての役割を全うしてきました。これは立派なことではありますし、ある種の強さでしょう。その一方で、家庭には気を配らず家父長としての権力を振り回す事例が多く見受けられました。
現代の若者は、大黒柱としての役割を放棄しながらも、男としての権力を振り回すことも少なく、昔の男性に比べれば優しい存在に仕上がっていると言えます。仕事を中心としない生き方の選択も出来るようになってきているため、これもある種の強さなのではないでしょうか。
今と昔、どちらが強いと言う比較は、社会の形がまるで違う以上無意味です。草食系男子を弱いと罵る中高年の方はこの視点が足りないのではないかと思います。
草食系男子は悲しいかな、女性からもバッシングを受けることが多いです。理由は簡単です。リードしてくれない、恋愛に消極的というものです。
確かに、男女平等が叫ばれ、男性も相手の気持ちを察したり、優しさが重視される風潮が生まれました。
しかし、どうやら女性はまだ男性に、女性をリードする役割を求めているようです。2014年に行われたアンケートによると次のような結果が出ました。
こうしてみると、女性がいかに男性に対して「私を引っ張って欲しい!」という願望を持っているか分かります。ただ、女性からデートに誘うのもいいと考えている女性が半数も存在したことには驚きですね。
草食系男子はその優しさ故、女性にグイグイ迫ることが難しいです。それに対して情けないと感じる女性が多いのも仕方がないのかも知れません。
ですが、非難を受ける云われがあるかと言えば話は別です。リードするのが苦手な男子も当然いますし、それが多様性でしょう。受け身でふんぞり返ったまま「リードしてくれないなんてあり得ない」と言ったところで、自分にできないことを他人に求める厚かましさが浮き彫りになるだけです。
リードする側とされる側という風潮を打破し、共に引っ張り合うような関係を築けるかどうかが今後の恋愛市場を左右するでしょう。
ここで一つ、草食系男子の特徴を復習してみましょう。メディアにより歪められていない本来の意味は
こうして見ると、一昔前の男性とは真逆であることが分かります。実際、1990年代以前の男性学は、現代の草食系男子叩きの真逆で、男たちに家父長制の破棄や、家庭内での優しさの獲得を促す内容が中心であり、「男らしく女性をリードしろ!」といった内容ではありませんでした。むしろこれは非難の対象となることもありました。それくらい昔の男性は女性に対し、権力の面では圧倒的優位性を持っていたのです。
男たちを変えていったのは言うまでもなくフェミニズムという運動です。男たちによる「支配」から女性たちを解放しようという動きが活発化したのです。
ここでもう一度草食系男子の特徴を見てみましょう。項目を読み上げていくとある意味「フェミニズム」の成果であるような感覚があるのではないでしょうか。彼らは女性を支配しません。進歩した男子と言えます。
などという主張も耳にしましたが、おそらくこれは単にその女性が自分にとって都合のいい優しさだけを享受し、都合の悪い優しさを「弱さ」にカテゴライズすることで、おいしい所だけ頂いてしまおうという魂胆なだけです。
昔は、今で言う草食系が求められ、実際に男性は変化を成し遂げました。女性を尊重する男性が増えたのは大変喜ばしいことです。そう考えると今肉食系男子を持ち上げるのは時代逆行な気がしてなりません。もちろん、グイグイとリードする男性がいなくなり、ある種の憧れを持つことは理解できます。ですがそれは結局無いものねだりに過ぎないのではないでしょうか。男性は女性の需要に応えようとする生き物です。「草食系なんて情けない!」という認識では、積み上げてきたフェミニズムの成果を破壊しつくす結果になる恐れがあるのです。
いかがしたでしょうか。多くの批判に晒されることのある草食系男子ですが、とても優しく先進的な存在であることは間違いないです。この記事では多様なパターンのバッシングを取り上げ分析しましたが、どれも理不尽という印象です。「昔はよかった」「最近の若者は」という言葉に惑わされる必要など一切ありません。そんなのは「枕草子」の時代から続く荒唐無稽な伝統芸能に過ぎません。
無理して自分を変える必要などどこにもありません。自分らしくが第一です。
ビバ!草食系男子!私は何度でも叫びたいと思います。
ヒカゲ 20代にして自らのスペックの低さから、職場では窓際一直線系男子。趣味はスキーや旅行、漫画やゲームと多種多様です。物を書くのを苦としない特殊な生態をしており、手紙やメールなどの研究中!