陰キャと陽キャ、それらは決して交わることのないねじれの位置に存在する…..。
普通に生きていれば学生生活以降深くかかわることはあまり多くないでしょう。
これから皆様にお伝えするのは、ひょんなことから筋金入りの陰キャの私が、陽キャの群れに放り込まれた際の記録でございます。
事の発端は突然舞い込んだ一本のLineです。
ひさしぶり!今度仲間と飲み会をやるんだけど、お前も来ない?人が足りなくってさ
「行くわ」と返信しました。恐らく陽キャしかいないであろうことは分かっていました。私は血迷っていました。何か面白いことが起こるかも、というあまりにも無謀な発想です。もしかしたらかわいい女の子とワンチャン狙っていたのかも知れません。
スイミーという物語を知っているでしょうか。他の魚が赤く鮮やかな色をしている中、そこに混じった黒くて地味な色をしたスイミーが「巨大魚の目」を演じることで外敵を打ち払うと言うお話です。
もしかしたら私も陽キャしかいない集団で「スイミー」に成れるのでは!?
当時の私は若かったのでしょう。その思い上がりは粉々に打ち砕かれることになります。
指定場所は都内のとあるバー。影の生き物である私には無縁の場所のはずでした。
外から見るとドアの隙間から光が漏れてとても綺麗です。勇気を出して扉を開くと
\\ガヤガヤガヤガヤガヤ//
うるさい、とてもうるさいです。大げさな笑い声や女性の黄色い声が部屋中こだましています。
この時点で私はすでに帰りたくなっていました。しかし、既に入り口で入場料を払ってしまった手前、帰るに帰りにくい状況でした。
一刻も早く誘ってきた友人と合流しないと気がどうにかなってしまいそうです。こんな疎外感を味わったのは一人でディズニーシーを回っていた修学旅行以来でございます。
そんな時、ちょうど彼から一本のlineが入りました。さては場所を教えてくれるのか!?と携帯を見てみると……。
悪い!!急用でこれなくなった( ´∀` ) 適当に楽しんでて!!
連絡遅くなってごめん!!
初めて友人に対して殺意を抱いた瞬間でした。この瞬間、私の地獄の陽キャ潜入企画が幕を開けたのです。
友人からの突然の裏切りに打ちひしがれる私。
まるで世界から取り残されたかのような感覚に陥りました。今にも倒れそうでした
しかし、いつまでも落ち込んではいられません。飲まなきゃ損です。こっちはすでに参加料として既に5000円という大金を払っています。返金は恐らく難しいでしょう。ここはすでに陽キャ共のテリトリーなのです。
どうやら陽キャというものは、フィールド魔法「BAR」によってより一層力を増すモンスターのようですね。
1人の陽キャがこちらをじーっと見てきます。何これ怖い。不自然に周囲を徘徊する影者を見て不審に思ったのかも知れません。
そしてついに近づいてきました。思ったより身長がデカくて焦る私。あごひげ、ネックレス、バチバチに固めた頭、神々しいまでの威圧感です。
陽キャAは気さくに私に話しかけてきました。
きみ、ここの飲み会初めてだよね?
あっはい、その、初めてです
じゃあさ、まずはリーダーに挨拶しようか
突然出てきたリーダーという単語。どうやらこのコミュニティを取り仕切っている人物がいるようです。初めて参加した人は挨拶に行くのが習わしのようです。
既に陽キャ力(私は陽力と呼んでいます)の高い陽キャAでさえ下っ端に過ぎなかったとは、背筋が凍りつく思いです。言われるがままに付いていく私の前に現れたのは立派な体格の男性でした。
※画像はイメージです
陽キャAを超える威圧感にたじろぐ私。私は彼を「陽キャキング」と呼ぶことにしました。会話の内容はもはや覚えていませんが、数分話した後、彼はこう言いました。
陽キャキング「なんか君つまんない人生送ってそうだね笑」
「なんていうか引き出しが少ないのよ」
耳を疑いました。ここまでの暴言を言われたのは随分と久しぶりです。高校の頃、球技大会中にこっそり帰宅した次の日、クラスのリーダーに「死ね」と言われた時以来でしょうか。
しかし、相変わらず彼は笑顔で私との会話を続けます。ここで私は思いました。
もしかしてこの人に悪気は無いんじゃないか?
この瞬間、私(陰キャ)と陽キャのコミュニケーションの違いに気付くに至りました。
我々陰キャは発言一つ一つにとても気を使う傾向があります。それは気心の知れた中であろうと例外ではありません。初対面ならなおさらです。
特にこれらはコミュニケーションにおいてはタブーです。相手を傷つけてしまいますからね。
しかし、陽キャと呼ばれる多くの人々は時にこのタブーを賢く破ります。何よりも自分の発言したいことを何よりも優先するのです。
それならば私が陽キャキングに心無い言葉を浴びせられたのにも納得がいきます。確かにその発言によって、私には嫌われるかもしれませんが、他の周りの人物には実際ウケていました。
「早い話が、タブーは破るためにある」というメンタリティーが彼らをコミュニケーション強者足らしめているようです。
君さあ、この土日何してる?
あっその、何も予定はないです(笑)
ええええっなにそれ!?生きてて楽しいそれ(笑)
見てよ俺のスケジュール
陽キャキングに一通りいじめられた後、今度は最初に遭遇陽キャAに話しかけられました。そこで由々しき事態が起こります。
忙しい自慢に遭遇してしまいました
目の当たりにするまでは正直都市伝説かと思ってました。彼はこちらに予定のぎっちり詰まったスケジュール表を見せつけてきました。「何時から誰と会う」、といった風に一切の隙もないスケジュールです。
しかし面白い気はしません。何しろ他人の「俺って充実してるだろアピール」に付き合わされるのですから。人間がこの類の自慢をしている時と自慰行為をしている時のIQはおそらく同じです。
では、なぜ自慰行為にも等しい忙しい自慢を人はしてしまうのでしょうか。
それは恐らく「自分への自信のなさ」でしょう。
自慢話をするのであれば、もっと他に尊敬されるようなエピソードは作れるはずです。
いくら稼いだとか、大きな挑戦をしただとか、そちらの方が恐らく沢山の賞賛がもらえるでしょう。しかし、一部の人間は頑なに忙しい自分を誇ろうとします。
言ってしまえば、このような人は自慢するに値するような結果を出せていないのです。そのため、実現した誇らしい結果ではなく、スタミナさえあれば誰でも実現可能な忙しいアピールに走ってしまうのです。そして「俺はこんなに忙しいのだから凄い人のはずだ」と留飲を下げるのでしょう
結果を生むより過程を自慢する方がずっと楽ですからね。
うっとおしい休日マウントは軽く受け流してやりましょう!
飲み会に潜入した私ですが、既に陽キャAと陽キャキングの猛攻によりクタクタでした。
何がスイミーになってやろうだ。私ごときがスイミーを語るなどよく考えれば100年早かったです。
せめて酒だけでもたらふく飲んで元を取ってやろうか、と考えた時でした。
ウェーーーーイ コールイカセテモライッヤッシュwww
私がこの世で嫌いなもの、戦争といじめと飲み会のコールです。
この時点で私は帰宅を決めました。一瞬で荷物をまとめ、人ごみの中酒で火照った体を捻らせ寒空の下へ飛び出していきました。
バーの扉が私を見送るようにギイッと音を立て、汚いコールの音を遮るようにバタンと閉じました。
さらば、陽キャランド。彼らとは分かり合えないということがよくわかりました。
以上が、私の陽キャ飲み会潜入記となります。得たものは何もなかったです。強いて言えば時間の価値を学ぶことができたぐらいでしょうね。
皆さんも軽い気持ちでこのような場所に飛び込まないようにしましょう。本当に後悔しますよ。マジで。
ヒカゲ 20代にして自らのスペックの低さから、職場では窓際一直線系男子。趣味はスキーや旅行、漫画やゲームと多種多様です。物を書くのを苦としない特殊な生態をしており、手紙やメールなどの研究中!